2024.04.02

3月23日オープンキャンパスでのリレー小説企画のご紹介

maru オープンキャンパス

3月23日のオープンキャンパスでのリレー小説企画にご参加ありがとうございました!

学生スタッフと来場者の皆さんとで文をつなぎ、完成した二篇の小説をご紹介します!

 


 

昔々、あるところに

レベル999の勇者がいました!
しかし彼の武器はいつでも竹刀一本。竹刀で倒せるような弱すぎる敵ばかりを相手にしてきた結果、年齢は実に91歳でした。
恋もせずに老いた勇者に、次の試合で勝ったら若返りの秘薬をさずけようというお告げが下った。
彼は決心する。私は大した戦績を上げていない。さあ、今こそ若返り、人生をやり直すのだと。
赤い炎を口からふきだすサラマンダーが立ちはだかる。
竹刀を構え、飛びかかろうとしたその時

「健太ー。ご飯よ」階下から声が響く。
健太は熱中していたR P Gゲームを中断し、晩ご飯に向かうのだった。

 


 

長いトンネルを抜けると、そこは……

長いトンネルを抜けると、そこは
常夏のハワイだった。
友人の翼がサーフィンをしている。
友人は先月、会社をクビになったらしい。
僕はその友人に無理矢理つれられて、ここまで来た。
波の音を聞いているうちに
僕はウトウトしてしまったらしい。

気がつくと、目の前に見知らぬ人が立っていた。
「あれ、もしかして、あの時にお目にかかった……」
そう言われたものの、私には心あたりがない。
「2020年5月5日になごみ荘の201号室に引っ越して来たでしょ」と続ける。
随分具体的だがやはり心当たりがない。

見知らぬ人は僕の手の中にある本、孔子の「論語」に目が止まったらしい。
それが結婚の決め手だった。

 


 

以上2篇、いかがでしたか? 
今回はこんな感じにまとまりましたが、続ける人によって、全く違う世界が広がっていくのが、リレー小説の面白いところ。
一つめの作品は、冒険小説として展開するか……と思いきや、現実世界に戻ってくるオチでした。現実世界と仮想世界を行ったり来たりさせて、さらに続けるのも面白そうですね。
二つめの作品は、青春小説っぽく始まり、ミステリーのようなストーリーに展開したかと思うと、最後はこんな結びとなりました。リストラされた友人とハワイにやってきた「僕」は「論語」を愛読する文学青年だったのでしょうか。意外性が面白いですね。

出来上がった作品を学生スタッフが読み返しているとき話題になったのは、二作めの途中、語り手(視点人物)の一人称が「僕」から「私」に変わっていることでした。もちろん、同じ人物が違う一人称を使ったのだと捉えてもいいのですが、ここで視点人物が変わったのだと考えると面白かったのではないかと盛り上がりました。つまり、「私」とは、「見知らぬ人」の一人称で、ここだけが「私」の視点で語られているのだというわけです。この読み方だと、「あれ、もしかして……」のセリフの主は「僕」、あるいは友人の翼ということになります。すると結婚したのは誰と誰になるでしょうか。……あれ? あれれ?

リレー小説、書いて楽しむだけにとどまらず、書き上がったものを鑑賞して(途中の一人称の変化や、一作めの「ですます体」から「である体」への変化など)細かいところのズレを逆手に取ってストーリーを再構成してみたり、物語や言葉そのものについて考えていくきっかけにしてみたり、今回の2篇は短編としてまとまりましたが、さらに繋げて長編化させていくこともできそうです。皆さんもぜひ、挑戦してみてください。