2022.04.05

学科長メッセージ

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日文は「国語」である


山本欣司 学科長   

 

 新入生のみなさん、はじめまして。文学部 日本語日本文学科、短期大学部 日本語文化学科の学科長を務める、山本欣司です。これからどうぞよろしくお願いします。

 みなさんはこれから、武庫川女子大学で学んでいくことになります。日文〈ニチブン〉学科の学生として、学科名の示すごとく日本語や日本文学、日本文化について様々な角度から勉強するのです。言葉は長い時間をかけて変化し続けますが、私たちにとって日本語は、それなしには生きていけないほど身近で大切な存在です。和歌や物語・神話は中国から文字がやってくるよりも前から、口伝え(口承)で受けつがれていて、日本の古典文学を形作ります。明治になって西洋の影響下でスタートした近代文学は、出版文化の隆盛とともにバラエティー豊かな変化を遂げました。そして日本文化は、世界に誇るべき多様性と存在感をかねそなえています。みなさんはそれらについて、じっくり学ぶわけです。

 とはいえ、新入生にとって「専門」というのはわかりづらいかもしれません。だから少し乱暴に要約したい、日文は「国語」であると。みなさんが小中高と12年間学んできた国語の授業を思い返してみて下さい。物語や説明文・評論、古文・漢文、言葉の意味や文法、書写など、さまざまな分野を通して、読解力や論理的思考力・判断力、表現力などの「国語力」を身につけてきたことと思います。現代文も古典も教材内容そのものが面白いし、難解な文章を深く読み取れるようになったり、文章が上手に書けるようになったりすると、そのこと自体が楽しく勉強のやりがいを感じます。大学の日文学科で学ぶことは、国語という教科の延長線上にあるのです。学ぶだけではなく、教職課程等を履修してそれらを教える資格も得られます(国語・書道・日本語)。1限は源氏物語、2限は小論文、3限は書道で4限は近代文学といったように、朝から夕方まで国語漬けなんて日もあるでしょう。興味に応じてさまざまな専門分野を学ぶことができます。

 コロナ禍が広がり、リアルなコミュニケーションが困難となる中、その重要性が再認識されたのは「国語力」だったと私は思います。対面でのコミュニケーションなら、表情や声のトーン・しぐさなどさまざまな手段を総動員して、私たちは意思伝達を行います。話の内容のみならず、顔の表情やしぐさから、自信のあるなしなども伝わってしまうため、人前でのプレゼンテーションには気をつかったものです。

 ところが、コロナ禍でのコミュニケーションにおいては、頼りになるのは言葉そのもの。SNSやLINE、学校のオンライン授業など、ネット越しのコミュニケーションが中心となり、相手の顔が直接見えないまま、文字だけで考えを伝える機会が増えました。誤解されないよう慎重に言葉を選ぶ必要があるため、今まで以上にやり取りに時間がかかり苦労したという方も多いかもしれません。相手に直接伝えるならひと言ふた言ですむのに、文章だと長々と説明しなければならないため疲れます。

 そういった場面で求められるのが、自分の想いをわかりやすい論理で言語化する力や、相手の言いたいことを正確に読み取る力です。国語力そのものといってよいでしょう。対面でのコミュニケーションにおいては、度胸のあるなしが印象の決め手だったりしますが、わかりやすい文章が書けるかどうかというのは教養の深さに左右されます。日文でみなさんは国語力を伸ばし、自分の未来を切り開いていって下さい。

 

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