山﨑 淳

山﨑 淳 教授
やまざき じゅん

もともと中世文学の物語や説話を研究していましたが、現在は文学と仏教の関わり、特に寺院に所蔵されている文献資料が文学作品の成立にどのように関わってくるのかに興味を持っています。そのため寺院の調査をすることが多いのですが、それは寺院の蔵の中で眠っていた書物を外に出し、くっついた紙があればそれを剥がし、塵を払い(虫喰いで悲惨な状態のものもあります)、番号を付して整理し、その書物1点1点から読み取れる情報を記録していく、という非常に地味な作業の繰り返しです。実は体力が必要な研究でもあります。時々、「自分はいったい何をしているんだろう?」と思ってしまうこともなきにしもあらずですが、どうもこうした研究方法が自分の性に合っているらしいと、ここ十年ほどで気づきました。

山﨑ゼミブログ

連絡先jyamazak★mukogawa-u.ac.jp
(注)★を@に変えてお送りください。
担当教科日本古典文学概論、中世文学講読Ⅰ・Ⅱ、日本語表現演習Ⅰ・Ⅱ、日本古典文学史、演習Ⅰ・Ⅱなど
専門領域日本中世文学、仏教文学、説話文学
所属学会中世文学会、仏教文学会、説話文学会
経歴大阪大学文学部文学科国文学専攻卒業
大阪大学大学院文学研究科博士後期課程単位取得後退学
大阪大学より博士(文学)を授与
日本大学生物資源科学部(2009~2018)
主な業績

『寺院文献資料学の新展開 第9巻 近世仏教資料の諸相Ⅱ』(編集 臨川書店 2020)
『近世寺社伝資料『和州寺社記』『伽藍開基記』』(共著 和泉書院 2017)
『神と仏に祈る山 美作の古刹 木山寺社史料のひらく世界』(共著 法藏館 2016)
『春日権現験記絵 注解』(共著 和泉書院 2005)
『金剛寺本『三宝感応要略録』の研究』(共著 勉誠出版 2007)
『宝永版本 観音冥応集 本文と説話目録』(共著 和泉書院 2006)
「安住院蔵『西行物語絵巻』の特色―附、翻刻」(『寺院文献資料学の新展開 第4巻 安住院資料の調査と研究』(臨川書店 2023)所収)
「浄瑠璃『西国卅三番順礼記』第三段目について」(日本大学生物資源科学部人文社会系研究紀要『人間科学研究』15号 2018)
「相応寺創建説話における「河陽」と『元亨釈書』」(日本大学国文学会『語文』158号 2017)
「蓮体編『礦石集』と地蔵寺所蔵文献―地蔵関連資料を中心として―」(『仏教文学』39号 2014)

担当する授業の内容・魅力

古典文学を対象に、研究の方法論を講義したり、みなさんと作品の読解を進めていったりすることが中心になっていきます。古典文学・近代文学に限らず、作品にはストーリーのみにとどまらない様々なフックがあります。実は現在の我々が作品を読んでなんらかの「違和感」を持ったときこそが、そのフックに出会うチャンスなのです。この違和感を違和感のままで終わらせてしまうのは、あまりにももったいない! それをきっかけに考察を巡らしていくことで、作品の持つ新たな可能性(魅力、と言ってもいいでしょう)を見出すことも多いわけですから。授業においては、作品にツッコミが入ったとき、そういうフックが見つけられるのではないかと思ってください。私もやりますが、受講するみなさんにも自分から作品にツッコミをいれ、より深く作品世界を味わっていくことを願っています。

研究の魅力

寺院の文献資料調査というのは、「現物(モノ)としての書物」(江戸時代以前のものが多い)に触れることが中心になります。実際に書物を手に取ると、その内容とともに、「表紙に名前が見えるこの人は何者なのだろう?」「この記号は何を意味しているのだろう?」と、絶えず興味が湧いてきます。それを知るために、さらに別の書物を手に取り、また関係する先行研究をチェックしていきます。こうした小さな積み重ね(そもそも研究というのは先人の研究の積み重ねの上に成り立っています)が、ある日、明確な形を持った像を結ぶことがあります。たとえばそれは人と人とのネットワークだったりします。そして、さらに思わぬ発見や、ハっとした着想につながることもあります。こうした瞬間を強く体感できることが研究の魅力と考えています。

紹介したい一冊紅野謙介『書物の近代』(ちくま学芸文庫 1999)

私は古典文学が専門ですが、「研究の魅力」のところでも記したように「現物(モノ)としての書物」を相手にすることが多くあります。ここに紹介した一冊は、近代が対象となっていますが、文学作品・文学史に「モノとしての書物」という視点から迫っており、その点では私の研究にとっても興味深いものです。本の装丁のみならず、印刷用の紙や収納用の家具にも考察を及ぼしていく本書の内容は、物事を様々な角度から見ていくことの面白さ、重要性を具体的に見せてくれています。