2011年4月の着任で、すっかり武庫女になじんだ気がします。
それまでの10年間は、青森県にある弘前大学の教育学部で教えていました。太宰治も暮らしていた弘前は、夏は涼しく快適なのですが、冬は厳しく雪深い土地です。源泉掛け流しの天然温泉や海の幸・山の幸を堪能しながら、文学研究のみならず、国語教育について考えていました。娘が小学校に上がるタイミングで一緒にスキーを始め、怖がりな私でも少し滑れるようになりました。
私は子どもの頃から小説やマンガが大好きで、推理小説や歴史小説・SFなどを読みあさっていました。重度のオタクだったわけですが、高3の夏に文学に目覚め、結果的に近代文学研究者になりました。フィクションがなくては生きていけないため、いまだに読書や映画鑑賞を欠かすことができません。授業では、一人でも多くの学生を小説好きにしようとたくらんでいます。
大学で文学について学ぶのは、知識を身につけ読解力や表現力を高めるためですが、クラスメイトと交わりながら小説について学ぶことで、みなさんが他者とのコミュニケーションの面白さや豊かさに目覚めてくれるといいなと思います。ひとつの作品をめぐって、みんなで「ああでもない・こうでもない」と議論しながら賢くなれたら、最高だと思いませんか?
学科
教員紹介
山本 欣司 [やまもと きんじ] 教授

連絡先 | kinji★mukogawa-u.ac.jp (注)★を@に変えてお送りください。 |
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担当教科 | 学部:日本近代文学概論、日本近代文学史、近代文学講読、演習Ⅰ、演習Ⅱ、卒業論文 大学院:日本文学研究 |
専門領域 | ・日本近代文学、特に小説の解釈について研究している ・国語教材(小説)の研究も |
所属学会 | 日本近代文学会、日本文学協会、阪神近代文学会、樋口一葉研究会 |
経歴 | 1966年 京都市生まれ 1989年 立命館大学・文学部(日本文学専攻) 卒業 1995年 立命館大学大学院・文学研究科(日本文学専攻)博士後期課程 単位修得満期退学 2001年 弘前大学・教育学部(国語教育講座) 2010年 博士(文学)学位取得 2011年 武庫川女子大学・文学部(日本語日本文学科) |
主な業績 | 著書 ・Crossing the Borders to Modernity : Fictional Characters as Representations of Alternative Concepts of Life in Meiji Literature (1868–1912) (Harrassowitz, Germany、2022.1) ・博覧会 (コレクション・モダン都市文化 第76巻、ゆまに書房、2012.7) ・樋口一葉 豊饒なる世界へ (和泉書院、2009.10) ・論集 樋口一葉 Ⅳ (おうふう、2006.11) ・〈新しい作品論〉へ、〈新しい教材論〉へ 評論編4 (右文書院、2001.11) ・論集 樋口一葉 (おうふう、1996.11) ・作家の世界体験―近代日本文学の憧憬と模索― (世界思想社、1994.4) 論文 ・孤独を癒やすということ――アーノルド・ローベル「おてがみ」を読む―― (『学校教育センター年報』第4号、2019.2) ・ 別役実「愛のサーカス」を読む (『学校教育センター年報』第3号、2018.2) ・「泥の河」論――小栗康平の世界へ―― (『弘前大学教育学部紀要』102号、2009.3) ・芥川龍之介「蜘蛛の糸」を読む (『弘前大学教育学部紀要』98号、2007.9) ・立松和平「海の命」を読む (『日本文学』54巻9号、2005.9) ・「たけくらべ」と〈成熟〉と (『国文学 解釈と教材の研究』49巻9号、2004.8) ・後悔の深淵――「山月記」試論―― (『日本文学』47巻12号、1998.12) ・「十三夜」論――お関の「今宵」/斎藤家の「今宵」―― (『国語と国文学』71巻8号、1994.8) |
研究の魅力 | 近代文学研究の魅力は、答えが一つとは限らない点だと思います。とくに僕は、小説の解釈が専門なのですが、10年~20年くらいのスパンで、作品解釈が変化していきます。ハッピーエンドだと思われていた結末がバッドエンドだと主張されたり、正義漢だと考えられていたキャラクターが、自己中心的だと見なされるようになる。自分のアイデアが、研究史を塗り替えるかもしれないと思うと、研究のやりがいがありますし、学生の卒論ですら、誰も気づかなかった新しい発見をもたらす可能性があるのです。 |
担当する授業の内容・魅力 | ・近代文学講読 |
紹介したい一冊 | 前田愛『樋口一葉の世界』(平凡社) |