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担当教科 | 学部:日本近代文学概論、日本近代文学史、近代文学講読、演習Ⅰ、演習Ⅱ、卒業論文
大学院:日本文学研究 |
専門領域 | 日本近代文学 |
所属学会 | 日本近代文学会、日本文学協会、阪神近代文学会、樋口一葉研究会 |
経歴 | 1966年 京都市生まれ
1989年 立命館大学・文学部(日本文学専攻) 卒業
1995年 立命館大学大学院・文学研究科(日本文学専攻)博士後期課程 単位修得満期退学
2001年 弘前大学・教育学部(国語教育講座)
2010年 博士(文学)学位取得
2011年 武庫川女子大学・文学部(日本語日本文学科) |
主な業績 | 著書 ・Crossing the Borders to Modernity : Fictional Characters as Representations of Alternative Concepts of Life in Meiji Literature (1868–1912) (Harrassowitz, Germany、2022.1) ・博覧会 (コレクション・モダン都市文化 第76巻、ゆまに書房、2012.7) ・樋口一葉 豊饒なる世界へ (和泉書院、2009.10) ・論集 樋口一葉 Ⅳ (おうふう、2006.11) ・〈新しい作品論〉へ、〈新しい教材論〉へ 評論編4 (右文書院、2001.11) ・論集 樋口一葉 (おうふう、1996.11) ・作家の世界体験―近代日本文学の憧憬と模索― (世界思想社、1994.4)
論文 ・孤独を癒やすということ――アーノルド・ローベル「おてがみ」を読む―― (『学校教育センター年報』第4号、2019.2) ・ 別役実「愛のサーカス」を読む (『学校教育センター年報』第3号、2018.2) ・「泥の河」論――小栗康平の世界へ―― (『弘前大学教育学部紀要』102号、2009.3) ・芥川龍之介「蜘蛛の糸」を読む (『弘前大学教育学部紀要』98号、2007.9) ・立松和平「海の命」を読む (『日本文学』54巻9号、2005.9) ・「たけくらべ」と〈成熟〉と (『国文学 解釈と教材の研究』49巻9号、2004.8) ・後悔の深淵――「山月記」試論―― (『日本文学』47巻12号、1998.12) ・「十三夜」論――お関の「今宵」/斎藤家の「今宵」―― (『国語と国文学』71巻8号、1994.8)
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担当する授業の内容・魅力 | ・近代文学講読 僕の考える「小説の授業」の目的は、学生が自力で小説を精読できるようになることです。自分の解釈を言語化できるようになってほしいのです。このスタンスは概論科目から卒論ゼミまで共通していて、「近代文学講読」では樋口一葉の代表作を用いて、精読のトレーニングを行います。特徴的なのは、学生自身があらかじめ作品を丁寧に読み、問題意識を持った状態で僕の解説を聞き、自分の解釈との違いについて考えることです。主体はあくまで学生自身です。僕は樋口一葉の専門家なので、研究史を踏まえながら、見解が分かれたり読み間違いやすい箇所などを詳しく説明しますが、解釈は一つではないし、自分の考えを押しつけないよう気をつけながら授業を展開します。 毎年、初読時と学習後では、同じ作品がまったく違うように見えてきて驚いたと言ってもらえます。受講生自身が、自分の読解力の深まりや成長を実感するそうです。 ちなみに「近代文学講読」は、より良い授業となるよう工夫と実践に取り組んだとして、瀬口和義学長より令和3年度前期「授業改善奨励賞」を授与されました。
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研究の魅力 | 近代文学研究の魅力は、答えが一つとは限らない点だと思います。とくに僕は、小説の解釈が専門なのですが、10年~20年くらいのスパンで、作品解釈が変化していきます。ハッピーエンドだと思われていた結末がバッドエンドだと主張されたり、正義漢だと考えられていたキャラクターが、自己中心的だと見なされるようになる。自分のアイデアが、研究史を塗り替えるかもしれないと思うと、研究のやりがいがありますし、学生の卒論ですら、誰も気づかなかった新しい発見をもたらす可能性があるのです。 僕は樋口一葉という女性作家を中心に研究してきたのですが、ジェンダーバイアスのかかった研究者がそれまで積み重ねてきた通説と戦う必要がありました。だから、女性の歴史や家族観の問題など、歴史学や社会学の知見を参照しながら小説の読解に取り組んできたのですが、他ジャンルの研究成果を取り入れながら研究できる点も近代文学研究の魅力だと思います。
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紹介したい一冊 | 前田愛『樋口一葉の世界』(平凡社)
高3の夏、芥川龍之介に出会ったことがきっかけで、僕は日本文学を学ぼうと決意したのですが、大学図書館で前田愛という著名な研究者の論文を読んだことで、樋口一葉研究の魅力にとりつかれました。 前田愛は作家論ではありません。新しい研究方法を貪欲に取り入れて、斬新な角度から作品にアプローチする研究者で、なかでも「『大つごもり』の構造」という論文を読んだときの衝撃は忘れられません。「こんなにすごい論文が書けたら死んでもいい」と思い、大学院に進学する勇気をもらいました。お話しする機会を得る前に前田先生は亡くなられたのですが、受けた学恩は計り知れません。 40歳をすぎて自分の樋口一葉研究をまとめる際に、単行本の書名を『樋口一葉 豊饒なる世界へ』としたのも、前田先生へのオマージュを捧げる意味合いからでした。多くの文学研究者に、多大なる影響を与えた研究書です。
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