2015.02.16

平成27年度修士論文発表会 記録

maru 活動報告 tag 研究発表会記録

日時:平成27年2月16日(火)9時~14時   場所:C-702
《発表内容》
・赤松 優子 『源氏物語』の天と空をめぐって
・井上真梨奈 〈きく〉力が伸ばす話す力
・岡村 恵 『源氏物語』夕顔巻をめぐる解釈一源氏と夕顔の贈答歌を中心として一
・辻野 典郁  『源氏物語』における花散里
・万 莎 清末日本語通訳陶大均の研究
※これらの論文は「かほよとり」16号に掲載されています。
また、図書館一階マルチメディアラウンジでも読むことが出来ます。

開会・大学院での学びについて 9:00~9:30

平成27年度2月16日(火)9:00~14:00の日程で、修士論文の発表会を行いました。
発表者は、修士論文を提出した5名です。
大学院に興味を持っている学部生が聴講しやすいように、今年も特別学期のプログラムの一つとして開講しました。発表に先立ち、専攻長の徳原先生より学部生に向けて、「大学院での学び」と題して、大学院での学びがどのようなものなのかについて、簡単にお話いただきました。

赤松優子 『源氏物語』の天と空をめぐって 9:30~10:10

赤松さんは、須磨・明石・薄雲・野分の四巻の天変地異に着目して、『源氏物語』の天と空に関する描写を検討してきました。今回の発表では、これまで研究してきたことを踏まえて、天変は「物のさとし」によって示される傾向にあり、「天」は人知を超えた存在であり、朝廷や天皇などの公への啓示はあっても、個人に対してはあまり干渉しないのに対して、「空」はそれぞれの頭上に、個々に見える空間を指しており、個人に干渉し、畏怖といった心理的影響を人々に与えるという違いを持っていると結論付けました。

井上真梨奈 〈きく〉力が伸ばす話す力 10:40~11:10

井上さんは、〈きく〉ということに注目し、日本語学習者の言語運用能力について検討してきました。一言で〈きく〉といっても、その行為の中には様々な言語能力があるということを確認した上で、OPIデータを文字化したKYコーパスをもとに、適切なあいづちの能力が一つの言語運用能力の指標になることを指摘しました。そして、結論として、いわゆる話す力と〈きく〉力が表裏一体であることや機械的な聴解能力だけではなくて文脈理解または全体的な理解、あるいは総合的な〈きく〉力というものが必要とされているということを述べました。

岡村恵 『源氏物語』夕顔巻をめぐる解釈―源氏と夕顔の贈答歌を中心として― 11:10~11:40

岡村さんは、光源氏と夕顔の贈答歌を中心に据え、夕顔巻の解釈について論じました。夕顔巻巻頭において、夕顔が車中の光源氏に歌を詠みかけたのは、頭中将と誤認したからであるいう黒須氏の意見に賛同しつつも、夕顔は、「その後通ってくるようになった男」と「車中の人物」を結びつけてはいないことを指摘し、夕顔巻最後の贈答歌において光源氏が「夕露に紐解く花」と述べたところで、ようやく二人の人物が夕顔の中で結びついたのだと論じました。しかし、光源氏はあくまであのときの車中の中の者であると告げただけであり、本当の素性は明らかにしていないので、夕顔は不信感を持ち続けたまま亡くなったと述べました。

辻野典郁 『源氏物語』における花散里 12:40~13:20

辻野さんは『源氏物語』の女君・花散里の人物論について論じてきました。花散里には、他の女君にはみられない床離れの記述があることに着目し、光源氏からの共寝の誘いを拒絶し通す行為から彼女の意志の強さを読み取り、そのような意志の強さや積極性を持っていながらも、光源氏に対して常に誠実に接することを心がけているので、光源氏とは至極穏やかな夫婦関係を築いているのではないかと結論付け、「おいらか」「おほどか」「のどやか」と形容される花散里を捉え直しました。

万莎 清末日本語通訳陶大均の研究 13:20~14:00

万さんは、清末に日本語通訳として活躍した陶大均について研究してきました。「陶大均が残した資料、及びその実績」、「陶大均が東文学堂で日本語を学び始めるまでの経歴、及び入学の理由」、「陶大均と血縁、婚姻等により結びついている人たちの探索」の三つの観点から研究を進め、今回は特に陶大均と血縁、婚姻等で結びついている人たちを探索し、長年未詳とされてきた陶大均の次男・尚釗の素性や陶大均の妻・秋瑾の事跡を探るなどし、陶大均への理解を深めました。


以上、5名が発表しました。質疑応答も盛んになされ、休憩時間にもさまざまな議論が飛び交い、大変有意な時間を過ごすことが出来ました。発表者のみなさん、おつかれさまでした。
次回は、3/17(木)14:00~16:45 の日程で博士課程研究発表会ならびに博士学位取得者記念講演会を予定しております。多数のみなさまのご来席を心よりお待ちしております。

記事執筆:小西