本学科教員のS・Kが、北のどこかの大学にいるK・Sのもとで、2026年4月から7月まで、食を育むことばの研究をする。その忘備録の一部をお送りする。(今回は数の付く語句をたくさん使っている。)
文学館でのデータ収集を終えて分析に着手している。間借りしている共同研究室は、5月から週1でいらっしゃる名誉教授や、西(西宮よりさらに西)から数カ月に数回、いらっしゃる教授と、私だけで使っている。ここに週5,6のペースで滞在していれば、独占といっても言い過ぎではないだろう。K・Sの研究室とこの共同研究室を行き来して分析をする、これはこれで、研究態勢として贅沢である。しかし、折角の北の「お国」ならではの味、ここだけの食が楽しめない。折しも大学祭を迎えた週末、この数日で14万人来場すると聞く。学生の模擬店は数えきれない。味の宝石箱といった観はあるが、あいにく人込みは苦手だ。
データにしているエッセイ『市場の朝ごはん』(松村友視著)に「三角市場」の「八角」が登場する。八角とは、軍艦焼きや刺身がうまい「カジカ目に属する北海道の珍魚」だとあったし、「鎧状の硬質な表皮」で八角形をしているという躯を見る機会は、これまでなかった。ニュースでは赤肉のメロンが出回るとも聞いた。市場ならご当地もの揃いだし、大学前を通って乗り換えなしで行けるバスも、もうすぐ通る。
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| ①両側に続く模擬店 | ②駅名 |
昼はとうに過ぎた時間に到着した市場は、観光地らしく混んでいた。とりわけ、鮮魚を売りにした飲食店は一様に行列で、一体何時から列があるのかわからない。本日のお目当ては、まず八角を見る、と決めこんで、食べるのは後日の楽しみとした。
こういう観光名所の市場というのは、生簀の魚介や籠盛りの青果を見るばかりでなく、言語生活も観察しがいがある。何語なのか、どこの訛りなのか、非日常のはしゃいだ高めのトーン、あるいは、連れの緩んだ甘い表情、遮るように被さる売り声など。台湾、韓国、関西、札幌など、声や話の端々から人物ゆかりの地を推量する。
この市場は駅に並走する一本道になっている。バス道路を挟む対面の角と、運河沿いに、全国的に有名な菓子店がある(画像2の平仮名を左から読んだ店名である)。そこで「チーズケーキ、買っていくか?」というのは、地元の人だろう。冷凍でも販売しているが、長距離移動は難しい。対して、店の青い紙袋(中身はおそらく常温で日持ちする焼き菓子の類)を下げてスーツケースを引く人は、どこかの県や府から来たのだろう。私には、魚を下ろして刺身にする腕はない。けれども、チーズケーキならば前者、地元の人と同じく(と言ってもあと2か月足らずの期限付きだが)持ち帰って食せる。今なら定番に加え、期間限定のメロン味も選べる。「お国」とは大げさかもしれないが、これはこれで、当地で今しか食べられない。足早に帰ると、昼がだめなら朝の定食、と次の市場調査(?)の計画を練った。

